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 落ちていくのはいつだって簡単で。
さん」
「なんでしょう?」
「困ったことがあったらいつでも言ってくださいね」
「……ありがとうございます」
 暗い道は危ないから、気をつけて帰らないといけない。
「うおっ」
「起きた?」
「僕、また寝てたのか……」
「おはよう」
 月明かりに照らされた白い一本道。貝殻を模した寮と平たい岩の階段、巨大な海獣のあばら骨。太陽ほど光が届かない夜の海では、それだけがぼんやりと浮かび、あとはスマホのライトでもないとすぐに海藻や珊瑚にぶつかってしまう。
 海の魔女を象徴とした寮、オクタヴィネル。
 寮長であるアズールが経営しているモストロ・ラウンジと、道を挟んで隣に建つ寮、そこから外へ出られる鏡までに繋がるL字の道。その帰路を一足飛びに斜めに移動するほどとデュースは来慣れていた。
 オクタヴィネルでは、人魚や海の生き物以外あらゆる生物が外に出た時点で巨大な空気に包まれる。だから人間でも誰でも、海の中を呼吸に苦しむことなく移動できるようになっている。二人を覆っていた大きな泡は、起きたデュースが退いたことにより二つに分かれる。はデュースが完全に覚醒したことを確認すると前を向く。その顔は、よほどそちらの方が眠そうな目で、髪は無造作に浮かび上がっていて、セーターは伸びて毛玉だらけ。小さいながらも骨張った手と薄い身体つき。この少年がオンボロ寮と皆が呼ぶ廃屋に留まることになったのはほとんど成り行きだが、実際住んでみると彼ほどあの館の主に似合う者もいないだろう。
 一見するとなんにおいても反応の鈍そうな顔で、その実、頭はよく回っていて、食堂のシャンデリアを破壊して退学危機に陥った時、デュース達を置き去りに学園長に詰め寄る姿はとっさとは思えない口振りだったし、その後森のモンスターと出会したときの機転も早かった。
 デュースは時折、はわざとみすぼらしい格好をしているのではないかと思う。デュースが脱色していた髪を染め直し、言葉遣いや目付きを気にかけるように。目的は違うが、にも抑えたい何かがあるのではないか。上級生に絡まれて悪意を持って卵を割られた時、先に手が出たのはデュースだったけれど、前に足を踏み出すのはの方が早かった。
 そう、だから、──が「本当に」外見通りに大人しく見えたとき、
「なぁ」
「うん?」
「エースと、何かあったのか?」
 二週間前、がグリムを怒らせ、ついでにデュースや周囲も怒らせ、相棒がエースに入れ替わったあの日。
 デュースが食堂で二人を見かけた──より正確に言うならば、しばらく二人に気付かなかったとき、その影の薄さに驚いた。元々グリムという小さな怪獣がいなければ、トラブルともあまり縁のなさそうな人物ではあるが、それを差し引いても、顔馴染みの二人が、人混みの中で、他の人々と同じように溶け込んでいて、それが二人だと自然に見えた。
 きっと、その綻びに気付いているのはデュースだけではない。
「なんで?」
 前にいるの顔は分からない。
「上手く言えないけど、なんか……変だ」
「そう?」
 誤魔化すような物言いに、抱いた違和感は間違いではなかったと、内心安堵の息を吐く。
「何にもないよ」
「本当か?」
「ほんとう」
「……やっぱり何かあったんじゃないか」
「なんにもないって」
「何があったんだ」
「しつこいな、何もないって言ってるじゃん」
 苛立ちをあらわに振り返るに心配が増す。露骨な警戒は怯えと捉えるが、こんな獣が唸るような真似を普段ならするはずがない。
「駄目だ、やっぱりお前なんか変だ」
「だったら何?」
「僕が迷惑だ」
 棘のある声が鳴りを潜める。が警戒を残しながらも気まずそうな顔でデュースを窺う。今のは悪い言い方だった。良くない手段を取った自覚はあるが、それでも、こちらを気にかけてくれる友人が好ましかった。
「何があったんだ?」
「言いたくない」
「……わかった。じゃあ、せめて、元に戻れないのか?」
「……もとに」
 顔を上げたは、途方に暮れた目でデュースを見たあと黙ってしまった。これは想像していた以上に深刻だ。
 自らの振る舞いが招いている面も否めないが、は良くも悪くも絡まれやすい。ただでさえNRCの生徒はガラが悪い。弱みを知ればそこに付け入ろうとする輩もいるだろう。より多くの生徒に気取られる前に、早く解消してしまった方がいい。
「どうやったら、いいんだろ」
「うーん」
「……あ、ごめん。聞いてばっかで」
「あ、いや、その、勉強会とかはどうだ?」
「わざわざ開かなくても、今日デュースが寝てたところは教えるよ」
「そうじゃなくて!」
 デュースは生温い視線を送ってきたに弁明する。提案はありがたいけども、邪な気持ちで出した訳ではない。存外付き合いのいい友人はわざわざデュースが言い出さなくとも面倒を見てくれただろう。それに胡座をかいてはいけないし、全然、全く、これっぽっちも保険をかける気持ちがなかったかと言われると嘘になるが。
「勉強の名目で一緒に寮とか泊まったら、仲直り、できるかと思って……」
「おー」
 相槌を投げ打ったは、大分いつもの調子に戻ってきていたが、そのまましばらく黙り込んでしまった。デュースは緊張した面持ちで答えを待つ。
「そうだね。……してみよっか。勉強会」
「いいのか?」
「うん。乗らなかったら乗らなかったで、二人ですればいいし」
 今回だけじゃ無理かもしれないけど。は前置きを付け足す。そんなに自信がないのだろうか。そこまで決定的に仲違いしているようにも見えなかったし、入学当時ならともかく、ここまで付き合ってきたエースがそうはっきりと断絶を示す人間にもデュースはどうしても思えなかった。もっと信じても大丈夫だと思うのに。
「私も元に戻れるなら戻りたい」
 薄く笑うは叶わない夢でも願うかのように言う。
 次の週末、デュースとエースはオンボロ寮に泊まることになった。

 ああ、まただ。
 またあの時の違和感だ。
 照明の落とされた談話室で、とエースが話している。窓際のソファで話す二人の声は、暖炉前で丸まっているデュースまで届かない。夜だから、グリムとデュースは寝てると思っているから、起こさないよう声を潜めて話すのは自然なことだ。
 あの時だって、がグリムを怒らせて、結果デュース達とは別行動を取っていて、だから二人だけで食事を取ったのだって、なんらおかしなところはないはずなのに。心臓を指で撫でられているかのように落ち着かない。
 床に伝わる小さな振動がほとんどなくなった頃、デュースは静かに体を起こす。
 階段を上って、二人がどちらに進んだのか分からないが、ひとまず左に曲がる。北西の角部屋がとグリムの寝室だからだ。東側は窓から外の光が差し込むが、北と西は壁と扉に挟まれた内廊下だ。ところどろ取り付けられた電灯も、今は妖精の余炎が芒々としているだけで薄暗い。廊下の突き当たり、の部屋の前で二人が何か話している、のだと思う。エースの姿がにほとんど重なって、何をしているのかよく見えない。
「……?」
 廊下の反対側のデュースからは、奥にいるエースの顔が、前に立つの背に隠れて、様子がよく分からない。何かがおかしい。顔半分は身長差がある二人なのに?
「だってさ、デュース」
「デュ、ス……?」
、オレと仲直りするの嫌なんだって」
「っはなせ、馬鹿!」
 の意識が逸れた隙に、矮躯にエースがのしかかる。デュースは気付いていなかったけれど、足元から伸びる大きな影が、後ろの窓枠が作る影を覆い隠していた。こちらに近付いてくるデュースの方へが駆け出してしまわないように、エースはより体重をかける。それを押し返すも、じゃれつくようにまたのしかかるエースも、デュースにはやけに親密に見えた。
 これはもしかして。お互い距離があるように見えていたのも、が妙に警戒していたのも。もしかして、喧嘩中などではなく、その、逆の、
「お前ら、付き合っ……て、た、のか?」
「そうそう」
「っちが、絶対にちが、〜〜〜〜ッ!!」
「あんまり声出すとグリムまで起きるよ」
 そう注意する声ですら、嫌に潜めた声でボソボソと話し、耳裏にキスをする。いつもより遥かに近い距離感に、デュースは見てはいけないものを見ている気がして目を逸らす。
 しかし、あの約束を取り付けた時、は確か、「元に戻りたい」と言っていなかったか。疑念がよぎって視線を戻すと、エースの手がの胸まで下り、形を強調するように円を描く。
「おい」
 さすがに見咎めた。が本気で嫌がっている。
「まあ本当に付き合ってないんだけど」
「え、」
「前に聞きたがってたこと、教えてやるよ。オレね、こいつのこと犯したの」
「……は?」
 頭をバッドで思い切り殴られたかのように動けない。さっきまで逸らしていた目もエースの台詞が耳に入った途端、今度はそこに釘付けになる。
「嫌って言われても止めないで、無理矢理濡らして、気絶するまでずっと揺さぶってさ」
 エースの膝が、の足に割り込んで、細い腰が少し浮く。
「すげー嫌がるし、めちゃくちゃ抵抗するし、マジで泣いてるんだけど、段々ね、我慢できなくなって漏らす声が、すっげぇ、かわいいの」
 甘くとろけた瞳でエースが言う。惚けた声で気の狂った話をしている友人を止めなければいけないのに、デュースの体は動かない。嫌がっている友人を助けなければいけないのに。エースを殴ってでも怒らなきゃいけないのに。それができないならせめて、この場から逃げ出して、せめて他の誰かに助けを求めなければいけないのに。
 足がずっと床に貼り付いている。
「ね、デュースも興味ない?」
「な、に」
 エースの手が更に下まで降りて、膝に乗せた、股の線をなぞるように、ズボンの上から縁に触れる。が裏打ちを繰り出そうとしたので、瞬時に引いて最初の負ぶさる形に戻ったが。
「はは、マジでおっかねぇな」
 腹に巻き付いた指でさえ、一本を狙って掴むので、エースは渋々両手を握る。
「はい、今ならデュースくん触り放題だよ」
「なに言ってンだ、この馬鹿エースッ!!」
「今なら手も塞がってるし、足もちょっと浮いてるし」
「や、っ──」
「ほら、こっち来て」
 あんなに動かなかった足が、エースの一声で、いとも簡単に床から剥がれる。二人の前まで近付くと、手足を塞がれたが怯えた目でデュースを見上げた。

「デュー、ス」
 顔を合わせたが悲痛な目をして、それでも、何の言葉もその口から出てこない。拒絶するのが正しいのか、助けを求めるのが正しいのか、もう正解が分からないのだろう。当たり前だ。パニックに陥った時、そんな簡単に的確な答えなど引き出せない。こんなに怯えていたのに。気付かなかった。気付けなかった。こんなに恐がっていたのに、震えていたのに、自分が、デュースが、仲直りできないか、元に戻れないか、差し戻すような真似をして。
 の両肩に手を置く。こんな小さな肩に一人で抱えさせてしまった。
、ごめんな」
「デュ、ス、たすけ……」
 最後まで言い切ろうとしていた唇を自分のそれで塞ぐ。一瞬表情をなくしたの顔がすぐに歪んで、暴れて大声をあげようとした口を今度は手で塞いだ。
「じゃ、部屋行こっか」
「ああ」
 違和感の正体が分かった。
 疎外感だ。

 ドアに背をつけたエースに押し付けるようにしてに口付ける。上手いキスのやり方は知らなくとも、ずっと口を塞いで、脳に運ばれる酸素を薄くしてやれば、自然と体の動きは鈍くなる。
「よし」
「よしじゃなくて」
 頭をずらして必死に息をするを見て頷くデュースに、肩越しのエースが呆れた視線を送る。半ば誘いに乗るかどうかも賭けだったような相手を、誰がここまで積極的になると思うだろう。本人の中で何か吹っ切れたのかもしれないが、切り替えの早さにエースの方がついていけない。
「エース、教えてくれ。次は何をすればいい?」
「えぇ、……とりあえずベッド行く?」
 壁側のドアでは窓からの光も遠く、デュース自身も影になっての様子が分かりにくい。そう思って提案したが、デュースは「このままでいい」と断った。
「一回全部削いだ方がいいだろ」
「そりゃそうだけどさぁー……、じゃあ、べたべた触って」
「触る……」
「はい、もう一回顎持って」
 両手はの手で塞がっているため、エースは口だけで指示を出す。デュースはさっきまでの添える形でなく、手のひら全体を顎から首にかけて押し当てるように触れる。幾分いやらしさには欠けるがいいことにした。
「そのまま、首とか耳とか、今からやるんだって、思い知らせるために。ねー、
 最初のうちは大きな面積で触れるようにしていたデュースだが、エースが唇や歯で落とす刺激にが身を固くする様子を見て、徐々に指先や爪を使っていく。首筋や耳の穴に、線をなぞるように撫でていくと、首を逸らして逃げようとする。睨むがちっとも恐くなくて、もう一度キスをした。
「腹触って」
 いつまでも顔周りばかり触れていたデュースに、焦れたエースが次を促す。スウェットの裾から手を差し入れて、恐る恐る脇腹に触れると、後ろにほとんど引けないがそれでも大きく身動ぎする。首や顎から熱を奪って、手のひらとの温度差はあまりないように思っていたが、胴体は更に熱い。蒸れた腹を線に沿って少しずつ上にあげていくと中指の腹に窪みが当たる。
「お前胸避けてるだろ」
 エースの指摘にデュースが固まる。
「ここまで来てなに照れてんの」
 からかう声に釣られて、窪みに置いていた指をゆっくりと横にずらす。あばらのわずかな段差の後に続く薄い脂肪。指を進めていくと先に触れる固いもの。
「乳首当たるだろ。もう固くなってるかな?」
 寒いもんね。エースは全く思ってもなさそうなことを言う。デュースの手が熱くて、かざされた手と胸の間がじんわりと汗ばむ。手のひらが肌の上を滑る。肉などいくらもないのにかき集めては揉む真似事をするそれにの耳が熱くなる。
「痛くないか?」
 時々、乳首が根元ごと動いて、取れやしないかと心配になる。デュースは手のひら全体を押し当てる形から、指先で触れる形に切り替える。
、痛くない?」
 もう一度聞いてもから返事はない。摘む指にかける圧を少し上げる。突然強くなった力にが激しく首を振る。
「言わなきゃデュース分かんないって」
 追及するようにデュースが耳朶を噛む。

「強いの、ゃだ」
「耳? 胸?」
「……っむ、ね」
「痛くない?」
「ん、」
 が声を出すことに味を占めたデュースは、時折わざと強弱をつけて半ば強制的に口を開かせていく。泣き声混じりの荒い呼吸がエースの耳にも絶え間なく入ってくる。エースは繋いでいた手を解いて、を自分の膝に乗せるよう持ち上げる。足が完全に浮いたが暴れるが、デュースが間を詰めて動かなくする。エースがスウェットをめくっての胸を晒す。
「デュース、こっち舐めて」
 平らな胸で聳り立った小さな乳首。デュースから見て左、の右の、まだ触れていなかった方の胸。
 デュースはしばしためらったあと、顔を近付けて突起を口に含む。触れた舌先に塩の味が広がる。根元から乳頭にかけて輪郭をなぞるように舐め、唾液を押し当て、何度か吸ったあと唇を離す。
「ありがとー」
 ほどよく湿ったそこに、エースの指が触れる。
「デュース上手だねぇ」
 滑るせいで上手く摘まれてもいないのに、は身を固くして自由になった手でデュースに縋る。スウェット越しでも腕に爪が食い込んでいるのが分かる。デュースはの背中に腕を回し、左の乳首も口に含む。背中を押して腰を反らせ、胸を突き出させて、より鋭利な角度で舌が当たる。エースとデュースに挟まれて、両方の胸を休む間もなく弄られる。舌で、指で、爪で、好き勝手に翻弄されて、首を振っても、足で蹴っても、肩を押してもびくともしない。
「もう引っ掻かなくていいのか?」
 急に目を合わせてきたデュースに挑発されて、指先に力を込めたタイミングで、背中を固定していた腕が緩む。支えを失ったはバランスを崩し、デュースに寄りかかってしまう。自力で、まともに立つことも敵わない。
「これならいい?」
「ああ」
 ベッドに上がって、エースが後ろから下げたズボンを、前にいたデュースが下まで降ろす。足首が抜けたと同時にに顔を蹴られた。頭上からエースの潜め笑いがする。痛めた鼻をさすりながら掴んだ足の先を見ていくと、付け根にあるはずの膨らみがない。上着の裾をめくってみるが、やはりなかった。
、え、お」
「うわ、やっぱり気付いてなかった」
「ついてない……」
 の足を下に戻して、デュースは下腹部に手を伸ばす。ちくちくと当たる陰毛の下、指に何も当たる感触がないのが不思議で、変な感じがする。距離感を誤っている気さえする。違和感を飲み込ませていると、視界の端での足が引いているのが見えたので、下手に動かれる前に捕まえる。まだ暴れていない左足も念のため膝で押さえた。スウェットが落ちて陰部を隠すが、手探りで先程と同じ形を辿っていく。二つの膨らみの間に爪先が少しだけ沈んで、水っぽい感触に当たった。
「……こうなってるのか」
「どうなってんの?」
「濡れてる」
「へぇ、……気持ちよかったんだ、よかったねぇ
 耳元で吹き込むエースには激しく首を振る。全身で拒絶したいのに、手はエースに繋がれて、足も両方押さえられてしまった。
「デュース、上、固いとこない?」
「上?」
「隠れてるかもだから、ちょっと指入れたまんま上あげて」
 エースの言われた通り進めていくと、体液でぬかるんだ指になにか突起状の固いものが当たる。
「っ」
「そこが一番弱い」
 突起に触れた途端、掴んだ足首も手の中で震えたのが分かった。デュースは下から掬った体液を上の突起に塗りつける。突起は注意深く触ると皮に包まれていて、そういうところは男女あまり変わりないのだなと思う。
「まあ、挿れる場所はさっきの濡れてるとこだから、そこ広げないとあんま意味ないんだけど」
 エースはそう言うと、折り曲げていた足を左右それぞれの足の間に割り込んで、自らの足と一緒に広げる角度を大きくさせる。
「ぇ、ぁ、ゃ」
「入れてみ?」
 平らなベッドの上で、エースの足だけでは抜けてしまいそうなそれも、デュースの手が固定することで、大きく開かれたままになってしまった。隠れた場所がどうなっているのか、こうして見るとみるとよく分かる。先程まで弄られ続けた陰核は色濃く膨らんでいる。潤った膣口に、デュースが恐る恐る指を入れていく。
「──ッ」
「ごめんっ、痛かったか?」
「最初はすげぇ狭いから、ゆっくりな」
「入るのか、これ……」
「だからちょっとずつやんの」
「ゃ、」
「逃げちゃだーめ」
 後ろに引いたの腰をエースが自分ごと前に戻す。デュースは膣内にもう一度指先を埋めて、身体の線に沿って今度は上向きに。ゆっくりと進めていくと、存外素直に根元まで飲み込んだ。
「中にいることに慣らせて、褒めて可愛がって緩ませて、そしたらまた増やして覚えさせるんだよ。形も、重さも」
 エースの言葉に柔らかく指を挟んでいた中がひくつく。を見ると、暗闇の中でも顔を染めあげているのがよく分かった。デュースが陰唇の上にある突起に触れる。中がまた震えた。
「他の気持ちいいとこ触りながら、少しずつ指入れて拡げんの」
「ぁ、」
 噤もうとした口にエースの顔が落ちてきて、声は出ないものの無理矢理中をこじ開けられる。デュースはエースの言われたことを忠実に守りながら、他に刺激を与えつつ、中を少しずつ進めて、指の動く範囲を広げていく。着実に増えていく痺れに、身体は逃げたいのに息を吸われて、意識の方が追いつかない。上顎を撫でられて、毛を逆立てるような感覚が背筋に伝う。視界がぼやける遠くの方で、嫌な音がずっとしている。
「いでででででで」
「長い」
「お前マジで引っぺがす奴がある!? 髪抜けるんだけど!?」
 無言で拗ねるデュースに、意図を図り損ねたエースは悪びれることなく舌を出す。
「どうせ声出さねーもん」
「嘘吐け、さっき出してただろ」
「そりゃお前が出させてたからだろ。普段なら出さない」
「……これでもか?」
 デュースはの表情を見て、エースに戸惑いの視線を送る。涙が張って潤んだ目、汗が滲む熱い皮膚。浅い呼吸を繰り返して、力の抜けた体は、抵抗するどころか自立する力すら残っておらず、背中をくたりとエースに預けている。状況が違えば、重い風邪を心配するほどだ。
、デュースが声聞かせてだって」
 エースが指の背での頬を撫でながら声をかける。ずっと遠くを見ていていたの焦点が段々とデュース達に合ってきて、涙越しでも分かるほど瞳孔が細まって、怒気を孕んだ目で睨まれて、そっぽを向かれた。
「……」
「ほらね」
 エースは呆気に取られたデュースを気にする風もなく、の下腹部に指を入れる。解けた中は柔らかく、すんなりとエースの指を飲み込んでいく。
「すご、上も下もとろとろ」
 が口を引き結んで、自由になった手でも覆う。エースが浅瀬を行き来して、デュースが奥をノックする。二人から刺激を与えられても、は頑なに声を出さない。息には唾が混ざって苦しそうで、水音は確実に増していっているのに。
「あー……、駄目だこりゃ。」
 エースは入れていた指を中から抜いて、を抱えたまま背もたれまで下がる。
「デュース」
「あぁ、そうか」
「舐めて」
 デュースは上半身を屈めて、の足の間に舌を入れる。
「やだっ、やだっ!!」
「あはっ、自分から出した」
「やめて! やめっ……あっ、ふ、──ッ!!」
「あらら、また閉じちゃった。でも、もうそんな強く閉めれないでしょ」
「やっ、うそ、やめてやめて……!! ぃゃ……」
 エースの言う通り、デュースが割れ目を開けて膣の中にまで舌を入れられたことが信じられなくて、はまたすぐ口を開けた。デュースは入れた舌と共に指も差し込んで、中を動かす。
「やだッ、やだ、やだぁ!!」
 こぼれる体液を舌で拾って、上の陰核に塗りつける。皮に隠れている突起を吸って、出てきたら突いて遊ぶ。悲鳴に反して、中に差し込んで動かすだけ指先に包まれる粘液が増して、締めつけとその後の緩みが大きくなる。
「デュースッ、おねが、ぁ、ぅ……」
 拒絶をしていたの声が、段々と弱くなって、か細い泣き声に変わっていく。普段の低くて静かな声が、甘みを帯びた高さになるのが心地いい。離したいだろうに髪を柔らかく掴むだけの手も、可愛らしくて仕方ない。
「ゃ、ぁ……」
、気持ちいいか?」
「だ、め、そこ、ぁ」
「デュースばっかり構わないでよ」
「んっ、ん──!!」
 曲げた背中にエースが被さって、デュースの舌が抜けた代わりに、エースの人差し指が入ってくる。二本の指に好きずきに動かれて、中を埋める体積が増えていく。
「たまんなくなってきたねー、かぁわいいー」
「あッ、したっ、したやぁ……!」
「だって、お前だけ気持ちよくなって終わりー、じゃないし」
 臀部に勃起した陰茎を押し付けて、腹に回していた手で臍の下に触れる。
「あーあ、今からこの中いっぱい入れられちゃうんだろうな」
「や、や……」
「今日はデュースもいるし、大変」
 身体を起こしたデュースがに頬擦りしながら名前を呼ぶ。二人の距離が近付いて、空気が冷たいのにずっと熱い。腕を押してもびくともしない。エースが真ん中を叩くように、デュースが奥を引っ掻くように刺激を送る。
「デュースのどんなのだと思う? っはは、想像した? えっち」
「もうゃ、やぁ、あッ……」
「ね、この後どっちがいい?」